大森芳男/【香水ねね】

1942年生まれ。
舶来石鹸の香りに憧れ、香料メーカーに入社。
以来、3000種類以上の香料の香りを記憶し、新たなパフュームをつくる仕事に専念。
82 年より長岡香料で香料研究室長。
2002年退職後は日本フレーバー・フレグランス学院講師を勤めるほか、フルーラローム代表として香りを創り続け活躍。

◎「ねね」の香水、どんな香りのイメージですか?

心豊かで温かい人柄を白檀の香をベースに用いて表現。
加えて秀吉が好んだ伽羅を組み込みました。
この伽羅の香りは、NHK大河ドラマ「太閤秀吉」の衣装展が開催された会場のために創作した香りです。
肌の温もりは、大変高価なムスク、少量のピーチを加え表現しました。そして、ジヤスミン、ローズオット、オレンジフラワ-、オリスを使用して華やかさと、高台寺蒔絵の豪華な雰囲気を表現しています。

トップノートは、ベルガモット・イランイラン・バジル・ローレル。

白檀・伽羅等、落ち着いた和の香とフローラル調の香り、約80種類の香料が調和した豪華な香りです。多くの人に好まれる、ふくよかな心に残る香「ねね」を感じていただければと、願っています。

◎「ねね」の香水 創作の思い出

「ねね」の香りの創作依頼を受け、400年前の戦乱期、歴史に残る役割をはたした「北政所・ねね」に関する資料の調査を始めました。
北政所の調査資料は大変少なく、晩年の17年を過ごした京都東山・高台寺を訪れました。

秀吉と利休がむかいあったであろう歴史的な茶室、一般には拝観できないお寺の内部や庭園を巡り歩き、今も大切に保存されている高台寺蒔絵の化粧道具や食器類をはじめ、ねねが日常生活に使用していた貴重な品々を拝見し、「ねね」にまつわるお話をうかがいました。

「ねね」の香りの創作イメージは、他人に心を開けない戦国時代、閉鎖的な時代に理知的で包容力がありおおらかな人柄、そのうえ気配りのできる心豊かな、多くの人から愛されたそんな人と形をイメージしました。殺伐とした閉ざされた時代に心の触れあいを通して新しい風を吹き込んだ女性像を表現しました。